第8章 心の休む場所
静まりかえった店内。
バックヤードの薄暗いライトだけ。
マスターに安室さんのことを連絡して、マスターが来れる日を聞いたりして、シフト調整をする。
あんまり梓さんには負担をかけたりしたくない。
だんだんと秋も深まり、暗くなるのが早くなってきた。
ちょっと休憩。と、椅子に座ったまま身体をのばしていると、裏口が開く音がした。
しまった、鍵を閉めてなかった。
びくびくしながらそちらを見ると、そこには安室さんが立っていた。
「え!?安室さん!?」
無表情で、すこし俯き加減。
服はベストを着て、白い手袋。
いつもと雰囲気が全然違って、ドキリとしてしまった。
「夏目さん…。」
声色もいつもと違う。
「体調は平気なんですか?怪我は?と、とりあえず座ってください。」
ソファに安室さんを促し座らせると、どうしたものかと悩んでしまった。
一体何があったのだろうか。
座っている安室さんの表情はこちらからではよく見えない。
しかし、いつものあの胡散臭い笑顔は一度も見ていない。
「すみません、夏目さんのメールを見て、ついここに来てしまいました。」
何かメールしたっけ?シフト調整するからまたメールしろ、ぐらいしか送った覚えがない。
仕事で何かあったってことは確実だろう。探偵業はきっと家族や近しい人には仕事のことは言えないし頼れないことが多いのだろう。だからここに来たのだろうか。
じゃあ、べつに私に話を聞いてほしいわけではないのかもしれない。
安室さんにとって、とるにとらない人物のほうが今は都合がいいのかもしれない。