第84章 彼の仕事【三章】
梓さんが出勤してモーニングが終わりそうになるころ、安室さんが裏から静かに入ってきた。
私はちょうどバックヤードで食器を片付けていたから、その手を止め、安室さんの元に向かった。
きっとまた寝ていないんだろう…
「安室さん…平気?」
「えぇ。………。」
「?」
裏口のドアの前でじっと私を見下ろしている。
「ん?ん?」
そんなに見られたらどうしたいいのかわからない。
とまどい、瞬きを何度かしていると、ぎゅーーーっと急に抱きしめてきた。
「…っ!?あ、梓さんいますよっ」
大声を出さないよう安室さんの耳元で言ったが、チカラが弱まることは無かった。
…どうしたんだろ。疲れすぎた?
「…はぁ。めぐみには本当にいつも…」
耳元で何が言っている。
すりっと頬擦りしてきた頬に何か固いものが当たり気になって視線を向けると、安室さんの耳にイヤホンがついていた。
「…あ、電話してるの?」
「いや、これは聞いてるだけ。」
…なにを?
捜査会議とか?まぁ聞いても教えてくれないだろう。
「ちょっと寄っただけなんですよ。これが必要かと思いまして。」
そう言って、私にスーパーの袋を手渡した。
中にはサンドイッチに使う食パンが入っていた。
朝、予想外にコナンくんにサンドイッチを作ったため、夕方までギリギリ足りないかもしれないから後で買いに行こうと思っていたのだ。
「ありがとう!助かったー!」
「いえ、それじゃあ、また明日。」
「うん。いってらっしゃい。気をつけてね。」
安室さんが出て行ってからふと、思った。
「ーーん?なんでパンが足りなくなるって知ってたの?」
開店前の事なのに。
あ、もしかして安室さんも一緒にコナンくんと食べるんだろうか。
コナンくんに聞いたとか?
…どっかで見てたのかな?