第78章 夏祭り
「ここの店員さんですか?」
「はい。」
話しかけて来た男性2人は浴衣姿で、そこそこイケメン。
私の近くには国宝級のイケメンが何人かいるため、目が肥えてしまっているが、それを抜きにしたらとてもモテそうな2人だった。
「うわっ、めっちゃタイプ。」
「えっ?」
「お仕事何時までですか?よかったら終わったあと一緒に遊びません?」
「やば、胸デカっ」
1人は丁寧に話しかけてくれているのに、もう1人は心の声がダダ漏れで品が無い。
「ごめんなさい、予定があるので…」
「残念。どうしても無理?俺結構本気になりそう。」
「どうしても無理です…彼氏いますし…ごめんなさい。」
「そりゃそうだよなー、またお店いきます。じゃあ。」
1人の人は最後まで丁寧な人だった。
丁重にお断りすると、それ以上しつこく誘ったりはしなかった。
ふたたび掃除を再開し、簡単に済ますとお店に戻った。
裏でゴミを捨てていると、安室さんがひょっこり顔を出してきた。
「さっきの2人、なんだったんですか?」
「え?さっき?」
「お店の外で。男性に話しかけられていたでしょう?」
「あー、ナンパです。断ったらすぐ帰りましたよ。」
「…気をつけてくださいよ。」
「…自分は楽しそうに女の子と話すくせに。」
ぽそっと安室さんに聞こえないように呟いた。
掃除を終え、私は月下美人の浴衣をパンパンとはたき、私は再び溜まってきたグラスの洗い物に手をつけた。
袖が濡れないように,紐でたすき掛けをして腕を出す。
今日はドリンクがたくさん注文されているから、次々洗わないと足りないくらいだ。
私は何も考えないよう自分に言い聞かせながら、黙々と洗い物を続けた。