第78章 夏祭り
「あむぴー!きたよー!」
カランカランっとドアの鐘と同時に店内には明るく元気な声が響いた。
「ははっ、ちょっと行ってきますね。」
苦笑しつつも、いつもの営業用の笑顔に切り替えて安室さんは表に出て行った。
まるで、ホストみたい…。
無料で優しく接客してくれて、あの顔面だもの、みんなこぞって会いにくるわけだ。
…かっこいいもんなぁ。
よくよく考えたら私なんかが釣り合うような人じゃない気もしてきた。
裏で食器を洗い終わり、梓さんのために、お昼用のミックスサンドを作った。
順番にお昼休憩をとらないと。
「梓さーん、お昼どうぞ。」
カウンターにいた梓さんを呼び、先に休憩を促すと少し足を引きずってるようだった。
「ありがとう、先に食べちゃうね。」
「…靴擦れしてる?」
「下駄慣れてなくて…あとで絆創膏はるよ。」
「足袋貸してあげればよかったね!持ってきてるよ!」
「たび?」
「うん、草履や下駄の時のくつ下。今日はずっと歩くと思って私、足袋履いてきたの。よかったらもうひとつあるから履いて?」
「ありがとうー!痛かったのー!」
「先に絆創膏も貼ろう?座って、貼ってあげるから、帯が邪魔で貼りづらいでしょ。」
「何から何までごめんね。」
「ううん、任せて。」
ソファに座った梓さんの前に跪き、赤く擦れたところに絆創膏を貼った。
「ところで、安室さん来てたけど、めぐみちゃんの浴衣姿みてなにかいってた!?」
「…あー…ううん。バタバタしてたから、すぐお店にいっちゃったの。」
「えぇー!一言くらいあってもよかったのに!!」
「仕方ないよ。じゃあ、私安室さんと一緒にオモテにいるね?ゆっくり休憩してて。」
「ありがとう!」
そう、仕方ない。
忙しいし、仕事だもの。いちいち私の浴衣姿に対して何か思ったりなんてしない。