第67章 いざ
私達は倉庫から少し離れたところから歩いて向かう。
どこから見られているかわからないから、安室さんと黙って歩いた。
木刀を右手に前を見据える。
安室さんは私のボディガード役としてすぐ後ろをついてきてくれた。
「…倉庫内はまだ来ていないようですね。よかった。」
昨日きた倉庫に二人で入る。
恐らく捜査員が前もって物陰に隠れて待機しているはず。
薄暗い倉庫の中月明かりだけが庫内を照らした。
「こんばんは。」
倉庫内の上の窓から覗く月を見上げていたら、静かな倉庫内に低い声が響いた。
…いつきていたのだろう。
「驚いた。来てたのね。」
「あぁ。今しがた。月を眺める貴方に見惚れてたよ。」
「お上手ね。貴方は待たせない方がいいと思って早めに来たの。」
「君が東京のリーダーで間違いないね。」
「えぇ。貴方はボス…でいいかしら。」
すごくダンディな男だ。
顔は東南アジアのような顔つきだが、髭をおしゃれに蓄え、服装は高級そうな黒いスーツに身を包んでいた。
「あぁ。今日は二人かい?」
「あまりぞろぞろ連れてきても話しづらいかと思って。貴方は信用出来そうだもの。」
「ありがたい言葉だ。」
「そう言う貴方はお連れは三人?」
「あぁ。私の秘書のようなものだ。勿論ボディガードも兼ねている。」
ボスの後ろには同じように黒いスーツをきた背の高い男が三人並んでいた。
そのうちの一人は昨日の長髪の男だ。
「強そうね。うちなんてひとたまりもなさそう。それなのにちゃんと話し合いに応じてくれて感謝するわ。」
「力でねじ伏せるのは簡単だ。木更津はそうしてきたが、君くらいの大きなグループは使い捨てするには勿体無い。」
「うちがそこまで評価されてるのね。」
「もちろん。君がそうさせた。」
私は彼に少し近づいた。
昨日の椅子に腰掛けると、男も私の目の前の椅子に腰掛けた。
『めぐみ、外にもやはり何台か車が来ている。恐らく他にも手下が来ていると思われる。捜査員を包囲させるから時間を稼いで欲しい。』
耳のイヤーカフから安室さんの声が聞こえた。
こんなに近くにいるのに話しているのを悟られないのは流石だ。