第63章 お疲れ様
安室さんのパーカーの右手の裾をぎゅっと握り、私は安室さんに近づいた。
どきどきどきどきーー……
安室さんは目を閉じた。
シートベルトをぐっと伸ばし、私は安室さんの唇に、そっと自分の唇を合わせた。
…柔らかい。
数秒合わせて、私はゆっくり自分の席にもどった。
「あ、ありがとうございました。」
「…え。それだけ?」
「もうホント充分でございます。」
「せっかく車を停めて、こんな人目のつかないところまできたんだぞ?ほら、おいで。」
ガチャっとシートベルトを外した安室さんがわたしの方に身を乗り出した。
「わっ!いい!もうホント大満足です!」
「早く帰らないと風見達が不審に思うだろ?ほら早く。」
シートに押さえつけ、私に近づいてくる安室さんの顔を押し返した。
「いいってば!ほら!全然私の言うこと聞いてくれないっ!」
「そういうのは聞かないって言っただろう。」
「きいてよっ!ていうか、あの!総長の格好だから…!なんか…やなの!」
そういうと安室さんは不満そうに自分の席に戻っていった。
「……ふーん。なぁ、あのリーダーになりきっためぐみって、家でもなれる?」
「…どうだろ。難しい…かな。」
「あのめぐみを抱きたいって思ったら怒る?」
「おっ…おこ!!……るぅーーかなぁ? ふ、複雑っ!」
わかんないよ!
その場の雰囲気じゃないと、総長になれないし…。
「安室さんだって、すんごい悪役になり切ってて、その状態で私に抱いてって言われても難しいでしょ?」
「抱く。抱ける。」
「……あ、そう。」
キッパリ言い切る安室さんに私はもう何も言えなかった。