第62章 潜入
「さて、静かになったところで、話を進めましょうか。」
「…。」
「貴方はわたしが何者か知っていますね?」
「えぇ、だいたいだけれど。急激に南のグルーブが力をつけるんですもの。簡単に調べはしたわ。」
「簡単に…ね。」
足を組み直し、相手をみる。
目を逸らしてはいけない。
弱さを見せてもいけない。
「話は早いですね。うちに手を貸していただけますか?」
「悪いけど…貴方達がいるというだけで、貴方達が何をしているかまでは知らないの。」
「ただの…お仕事ですよ。」
にっこり笑う長髪の男。
私はため息をついた。
「ただのお仕事…ね。悪いけど、私は頭悪いから駆け引き嫌いなのよ。帰ってちょうだい。」
…引くのが早過ぎだだろうか。
こういう時安室さんならもっと上手くやるんだろうけれど。
「まぁまぁ、そう言わず、貴方たちにもとても儲るいい話ーー…」
「いいえ、わたし、貴方が嫌いになったわ。話すに値しない。」
ピクリと笑顔が曇った。
にこにこ笑っていた長髪の男はうっすらと目を開け、わたしを見た。
「調子には乗らない方がいい。」
「あら、やっと本性だしたわね。好きよそっちの方が。…でも。」
ガシャン!!!
私は男の真横に木刀を振り下ろした。
「もう、遅い。…舐めないでくれる?儲け話程度に食らいつくとでも思ったの?まともな男つれて出直してきなさい。」
ブー、ブー
突如鳴り響くバイブ音。
長髪の男からだ。
私たちの話を通話で聞いていた携帯とは違う携帯のようだ。
どうぞ。と、目で合図送ると、長髪の男は電話に出た。
「はい。…す、すみません!しかしボス!!…わかりました。」
…ボス。
確かに男はそう言った。
電話の先に密輸組織のボスがいる。