第62章 潜入
足元に転び、向こうのリーダーは私を見上げた。
すると突如聞こえた拍手。
長髪の男だ。年齢は30くらいだろうか。
ほぼ未成年(私と安室さん以外全員だろうか)の中では目立つ存在だ。
「いやぁ、素晴らしい。さすがは大所帯をまとめる女性リーダーですね。」
「…。」
私は黙って彼を見つめた。
…というより、イヤホンから聞こえる安室さんの指示を待った。
『彼の出方を見ましょう。好意的…ではあると思いますが、相手に合わせられますか?』
右耳から聞こえた安室さんの声に応えるように、私は左手の人差し指を相手から見えないようにとんとんっと叩いた。
「実は公安警察が我々を嗅ぎ回っている。という情報がありましてね。」
「…。」
「しかし杞憂のようだ。貴方のその気迫、美しさ、雰囲気ーー。本物でなければ出すことはできないでしょう。」
「今の感じだと、あなたも私と会話するに値しないのだけれど。」
「まぁ、そう言わず。私は貴方に大変興味がある。」
じーーっと見つめ合う。
表情、動き、呼吸、全てを見られてる気がする。
「いいでしょう。少し話をしましょう。わたしも貴方に興味があるわ。ただし、さっきみたいな坊やとは話したくないの。人数は絞らせてもらうわ。こちらは4人。」
「こちらは私だけでいいでしょう。ですが、電話でこちらの会話を上に人間に聞かせても?」
答えに困って私はぎゅっと右手を握った。
すぐさま、インカムで安室さんから返事が来た。
『かまいません。このまま進めます。』
安室さんの指示を聞いて、私は頷いた。
「いいわ。あんた達、外で待ってなさい。ただし、イザコザを起こすようなことは決してするな。いいね。」
「へいっ!姐さん!!」
ぞろぞろと出ていくメンバー達。
タロージローに安室さんと私。そして、おそらく密輸組織のメンバーであろう長髪の男だけの空間になった。
長髪の男は先程湘南の男リーダーが座っていた椅子に腰掛け、
私は彼の正面の椅子に腰掛け向かい合った。