第6章 研究
「夏目さんはふわふわのパンと焼いたカリカリのパン、どちらのサンドイッチがお好きですか?」
「そうですねー…ハムサンドにはふわふわ…ですね。」
「僕もハムサンドにはふわふわのパンが合うと思います。」
じゃあ、やっぱり今買ってるパンをそのまま使うか、高級パンに変えるか…。
「蒸すと、いいんですけど、問題は蒸し器なんですよ…。」
蒸し器!!
そう言えば、数ヶ月前にマスターが奥さんが使わなくなったからあげるって家にある!
「家にありますよ!明日持ってきますね」
今から取りに帰ってもいいけど、家がバレちゃうのは嫌だ。
なんてたって道を挟んで向かい側だもの。
探偵事務所を観察してます。ってばれちゃう。
「じゃあ、それをつかわせてもらいましょう。」
「パンを蒸すって発想もレタスをお湯に浸すって発想もなかったです。さすが安室さんですね。頼んで良かった。」
「いえいえ、夏目さんが宿題出してくれたので、調べただけですよ」
アポロを想う夏目さんのお陰です。って、道具を洗う安室さん。
にこにこ笑う安室さんを見てて、何だか少し胸がチクっとした。
イラ?とは少し違う。でもドキっとは程遠い。何だろう…この感情。モヤッとする感じだろうか。
初めての感覚に私は安室さんの横顔を見つめてしまっていた。
この人はこの人で漫画に描かれていない物語があって。
事件にもきっと遭遇してるはず。
怪我だって苦労だって漫画に描かれてる以上にしてるんだろうな…。
それは安室さんだけじゃなくて、西の高校生探偵の服部平次君だってそう。
色々経験して、色々考えて、今の安室さんがある。
私はどうやって物語の登場人物に接すればいいんだろうか。
ここは漫画の通りに流れているのか、漫画を読んだことのない私には確かめようがないーー。
もう、私の好きなように動いてしまってもいいのかな…。