第59章 匂い
あの後全然寝れなかった。
あんな、イケメンの胸元で眠れるわけがないのだ。
心臓の音が聞こえてくるし、暖かいし、いい匂いだし。
ドキドキずっとしてたらいつの間にか意識は無くなっていったが、安室さんは眠れただろうか。
カーテンからの光でゆっくり目を開けると、優しい表情の安室さんが私を見下ろしていた。
「み、みないで。」
「おはよう、だろう。」
手で顔を隠していると、おでこのあたりを撫でられた。
「おはよ…」
「口開けて寝てるの可愛かった。」
「ぎゃーーやめてっ!!」
「こら、朝早いんだから。」
「誰のせいっ……いま、何時っ!?」
「6時かな。」
「ポアロ行かなきゃっ!」
私は慌てて起き上がった。
7時前にはポアロだ。
「そうか、もう少し早く起こせばよかったな。ずっと見てたらいつの間にか…」
「見ないでよ!洗面所お借りしますっ!」
「うん。」
荷物をもって、小走りで洗面所に向かった。
急いで着替えて、軽くメイクをして、整えて…
と、キッチンに戻ると安室さんもいつもの服装になっていた。
「朝ごはん作ってあげればよかった。」
「え?いいよー。ありがとう。」
「いや、食事は資本だ。めぐみと一緒に寝てるってだけで時間を忘れていた。…おにぎりだけでも作る。もう少し待って。」
「…ありがとう。」
安室さんが作ってくれるんだ…。
キッチンの勝手がわからないから、横で安室さんのやることを見て待っていた。
「梅干し平気か?」
「うん、大好き。」
「了解。冷凍ご飯で悪いな。」
「ううん、ありがとう。」
ラップに包まれたおにぎり二つをコロンと渡され、それを大事にかばんに入れると家を出た。
「送ってくれてありがとう…何からなにまでごめん。」
「いや、さすがにここから歩いてポアロは間に合わない。僕は午後からポアロだから、それまで女性捜査官の指導と、南のグループの情報を集めておくよ。」
「安室さんも忙しいね。」
「まぁ、僕は女性捜査官の前には出られないから、指導は風見を通して行われるが。」
「降谷さんは徹底的に秘密なんだね。」
「あぁ。」
車の中でこれからのことを話した。
急に真剣になる安室さんにさすがだなって思った。