第49章 黒い夢【2章】
「警察病院に行ってもらえるか。僕の車が……いや、めぐみ。電話を借りられるか。」
「鞄にあります。ロックは…」
「大丈夫、知ってる。」
…なんだと?
恐ろしい…恐ろしい男だ。
信じられないって顔で安室さんを睨みつけたら、「知ってるだけで別に中は見たことない」と言った。
とても信じられないのだが。
と言っても、べつに中を見られて困るものは無いのだけれど。
「普段の指の動きを見てたらなんとなくわかる。」
「あ、そう…。」
私の携帯でどこかに電話をかけ始めた。
「風見か、僕だ。…あぁ、とりあえず無事だ。それで、してもらいたいことがある。」
どこに向かえばいいのかまだ聞いてない為、私はとりあえず適当に広い路肩にとめて、話が終わるのをまった。
風見さんって人にキュラソーを観覧車に乗せろとかなんとかそんなことをいっている。
あまり聞かないようにはしたけど、やっぱり狭い車内、聞こえてくるのは許して欲しい。
左手で私の携帯を持って電話している。
何も持ってない右手の手首から血が出ていることに気がついた。
私は安室さんの膝の上に置かれたままの鞄を取り上げて、こんなこともあろうかと持ってきていた救急セットを取り出した。
大した傷ではないけれど…私にできることだから。
電話をしている安室さんの右手をとり、消毒していく。
細い線のように傷がついているため、どのサイズの絆創膏もあわない。
薄いガーゼをあてがい、包帯を巻いた。
「僕は僕で動く。これから指示は出せないと思って欲しい。頼んだぞ、風見。……僕に何かあった場合も、マニュアル通りに…わかったな。」
最後そう言って電話を切った。
何かあった場合ーー…
考えないようにしていたけれど、本人の口から聞いてしまうと、ぎゅっと心臓をつかまれたような感覚だ。
「あ…あむろ…さ…」
何か言わなきゃって安室さんの方を見たら、手を引かれ口を塞がれた。
「手当、ありがとう。」
すぐに離された一度だけの優しいキス。