第44章 独り占め
「そんなこと言ってると、本当に独り占めするぞ。そのくせ僕はめぐみをきっと傷つける。」
「勝手に私が傷つくとか決めないで。意外と強いかもしれないよ?」
「…僕をそんなに甘やかさないでくれ。」
後ろから優しく抱きしめられていて、どんな顔をしてるのかまではわからなかったけれど、声だけは少し寂しそうだった…。
そんな声…しなくてもいいのにーー…。
「私にだけはいいんじゃ…ないでしょうか…。甘えても。怪我くらいならいつでも治してあげる。逃げたくなったら隠してあげる。膝くらいいくらでも貸してあげる。バイクでどこへでも連れてってあげる。」
腰に回った安室さんの腕が弱まり、くるりと私は安室さんと向き合った。
じっと見つめ合う。
「とことん甘やかすんだな。僕を…。僕はめぐみに何をしてあげられる?」
私はにっこりも笑った。
「『無茶せず!怪我なし!頑張って!』…それで充分だよ。何事にも一生懸命で真っ直ぐな貴方を心から尊敬するし応援したい。支えたい。」
「…めぐみ。本当は僕が何をしてるのか、知ってるんじゃないのか。」
「…知らない。なんでもいい。貴方であることにはかわらない。それでいいんじゃない?」
安室さんの頬を両手で触れる。
「めぐみ。」
少し困ったような表情の安室さん。
「ひとつだけわがままいい?」
「なんだ?」
「今だけ…貴方を独り占めさせて…?」
安室さんの両頬に触れていた手を自分に引き寄せた。
「あぁ、好きなだけ。」
安室さんは両手を後ろの窓ガラスに置き、私に優しくキスをした。