第37章 声
震えはさっきよりも大きくなった。
怖がる演技をしていたのだが、より一層拍車がかかったかもしれない。
『お望み通り電話代わりましたよ。』
耳に響く声にその丁寧な話し方も、全てが安室透の声だと物語っていた。
「はは…やっと…会えたな…フルヤレイ…」
携帯の画面に写し出される主犯からの言葉を代わりに読み上げていく。
「おまえに…あいたかった…。どうだ…気分は…こんな組織から…表舞台に…出される気分は…」
フルヤレイ…?
彼の名前?
公安は日本の警察で、スパイとかしてるやつだよーーー。
スパイ?名前が違うの?安室さんは潜入捜査で来ている人?
『悪くないですよ。僕が出てきたことですし、これは僕の完全な負けです。認めましょう。電話も話も交渉も全て人質にさせる。貴方は裏で指示をするだけ。見事だ。』
「みとめたな…われらの勝ちだ。今からお前に会いに行く…。逮捕でもなんでも…するといい。……俺たちの組織に潜入…していた…あの男にも…もう一度…会いたい。…一緒にくるがいい。」
はぁはぁと息切れがする。
喉が異常に乾く。
『この…間抜けな女は…解放…する。…後で場所を聞くがいい…」
そこで、文章が切れた。
『文章はそこまでですか?場所を教えてください。大丈夫。必ずそこに助けに行きますよ。』
「…。あ……」
私はどうしたらいいのかわからなくて通話を切ってしまった。
安室さんだ。
絶対に安室さんだーー…
「警察に保護されるわけにはいかないって言ったもんな。よかったのか?」
「…っ!」
そうだ、彼がいたのを忘れていた。
横にずっといてくれたんだ。
「このままここから帰るか?俺はあいつらと一緒に『フルヤレイ』のところに行くよ。俺たちの組織はこれでおしまい。浅原組と同じだな。」
「…浅原組に私はそこまで思い入れはなかったけどね。」
「そうか。じゃあな。孝臣さんによろしく。」
「…うん。私のこと警察に話さないでね。」
「わかってる。」
持っていた携帯を服ですべてふいた。
指紋を全て消した。
私がここにいた形跡を全部消さないと。
髪の毛1本残さないようにーー…