第37章 声
ついぞ名前を聞くことがなかった誘拐犯の彼と廃墟のビルからでて、そこで別れた。
荷物は全部返された。
携帯をまずすぐにつけた。
マスターからメールが1通と、一昨日の夜一度だけ安室さんから電話が来ていただけだった。
マスターからは体調を気遣うメールだった。
風邪は治ったから明日から復帰できるというメールを返して、家へと向かって歩き出した。
家からさほど遠くない場所だ。
米花では本当に色々起きるなーー。
二日間、私が誘拐されていたことは本当に誰にも気づかれていないようだった。
それもちょっと寂しいけれどーー…
安室さんが警察官…?
フルヤレイって人?
とぼとぼと歩きながら今までのことを考えた。
夜ご飯を食べる時間だろうけど、とても食べる気なんてしなかった。
『彼が本当にただの探偵だと思っているのか』
『こちら側の人間かもしれない』
赤井さんに言われた言葉だ。
コナンくんと仲良くて。
銀行強盗の時は警察から逃げるように立ち去った。
誰よりも正義感が強く。
いつも忙しそうで。
怪我もたくさんして。
謹慎されるようなこともあって。
スーツをたまに着て。
『喫茶店での安室でもない、本当の僕になれる』
今思えば私には全然隠す気なんてないじゃない。
フルヤレイさんはーーー近くにいたんだ。