第29章 真っ白
高速に乗っちゃうと直ぐ海についちゃうから、私はとりあえず南に南に走った。
「私土地勘ゼロなんで、海教えてくださいね。」
エンジンが大きくてもヘルメットをしてても、インカムを通じて会話は簡単だった。
「まさか、めぐみのバイクに乗るとは思わなかった。」
「レンタルだけどねー。いいバイク借りれました!カッコいいでしょうー!」
「…まぁ。僕のナナちゃんに比べたらまだまだだがな。」
「わたしミッション持ってないから運転できないんだもん。」
標識をみながら、たまに曲がったりも。
「わたしも久しぶりの運転だから少し緊張してる。やっぱりバイクは最高ですね。」
「…そうだな。……にしても少し飛ばし過ぎじゃないか?」
「えー?全然ですよ。」
「…暴走はするなよ?」
「しませんしません。めぐみちゃんいい子。」
「どうだか。あっほら!今信号ギリギリだったぞ。危ない。」
「…真面目か。」
「なに?」
「公務員みたいなこといって。」
「……。」
「いいから黙って捕まっててください。」
そう言って私はぐっとペダルを踏み込んだ。
都会を抜け、バイパスを走らせる。
上着を持ってきておいてよかった。
県を越え、さらにしばらく走らせると、後ろから聞こえてくる重低音。
信号に引っかかり止まっていると、音の元凶が横の車線に止まった。
真っ白のセダン。
車体を下げ、タイヤのホイールは金。車内は蛍光色に輝き、ドンドンという音楽がここまで聞こえてくる。
…うるさい。
うぃーーーんと言う窓を開ける音が聞こえてきて、嫌な予感がした。
「なんだなんだ、バイク2ケツだせーな!」
「…。」
「おい、よく見たら運転してんの女じゃねーか!」
「めぐみさん、無視ですからね。」
インカムを通して安室さんが小さくつぶやいた。
もとよりそのつもりである。
女がバイクを乗っていたら絡まれることはたまにあった。
品のなさそうな顔。
左隣に止まった車、運転席の男はスキンヘッドでバカっぽいし、助手席の女もにやにやしてる。
「女がバイクとか辞めとけって、どうせ大型は運転できねんだろ?可愛い赤い原付でも転がしてろよ。」
ゲラゲラ笑う男に、
「やだーかわいそーよー」と目を細める女。