第28章 本屋
頭を軽く触れられただけで意識してしまう。
あの日の夜を思い出して…。
「顔…赤いぞ。」
そっと耳元で呟かれた声は、先程の丁寧な口調とは違って驚いた。
耳元を押さえ睨みつけると、やさしい笑顔のまま。
態度をコロコロ変えられると私もどう接して良いのか困るのだけれど…!
安室さんに連れてこられた定食屋さんはこじんまりとしたお店だった。
店内はいい匂いが充満していて、一気にお腹が空いてきた。
注文した生姜焼き定食が待ち遠しい。
「嬉しそうですね。」
「はい、こういうお店大好き。」
「よかった。じゃあ、注文したものが届くまで、これでも見てようか。」
そう言って、買い物袋から取り出したのは、さっき私が手にしていた雑誌。
そう、バイク雑誌…。
「なっ、ななな!なんで!」
「さっき買ったんですよ。めぐみさんったら目をキラキラさせてみてるんですもの。」
「ひぇっ!ちがっ!こんな…!」
「好きなんでしょう?バイク。いいじゃないですか。」
かぁーーっと顔が赤くなるのがわかった。過去の黒歴史を暴かれてるようだった。
「それで、総長さんはどんなバイクに乗ってたんですか?」
「元!です!!元!!」
「どっちでもいいですよ。あ、これなんてかっこいいですね。」
ペラペラめくっていたページを指差したのは、黒いバイク。
「いやいや、オーバーレーシングはスピードはいいけど、見た目がね。ニンジャなんて王道すぎて逆に…うーんって感じ。私はやっぱりアメリカンが好き。私は非力だっから400ccだったよ。ダサいっていうやつも居たけどあの全部剥き出しのエンジンがたまんなくカッコいい……。って、何言わせてるんですか。」
「本当好きなんですね。」
私のタイプのバイクが載ったページを安室さんに差し出した。
ちょうど出来上がった生姜焼き定食と、安室さんの焼き魚定食を囲いバイクの話で盛り上がった。
安室さんもバイクには詳しくて驚いた。
乗ったことはほとんどないらしいから、探偵として役立つだろうと勉強したことがあるらしい。