第3章 たらこ
安室さんがカートを押してくれて、私が品物をみていく。
「どんどん入れちゃうので、車に乗らなそうなのときはストップかけてくださいね!」
小麦粉、メープルシロップ、砂糖、ミルク、トイレットペーパーやキッチンペーパーや洗剤!!
スマホにメモしていたものをチェックしながらどんどん、カートに入れていく。
「私も自分の家で使うもの買うので、安室さんも何か必要なら入れちゃって下さいね」
と、自宅用のシャンプーとかも入れちゃう私。ちゃっかりチョコも入れちゃう。
じゃあ、これを…っと安室さんが入れたのは髭剃り用の泡。
意外でつい安室さんの顔をじっと見てしまった。
「え?何か?」
「安室さんも髭生えるんですね。つるっつるなのに。」
男性ホルモンどこ?ってくらい髭なさそうなのに。
「生えないほうが変ですよ」
頬をぽりぽりかく安室さんをみて、そんな仕草するから生えないって思っちゃうんだよ。
三十路は頬をかいたりしない。
「まぁ、確かにそうですよね。いくら私より年下に見えても思春期過ぎたら髭くらいはえますよね。」
「と、年下…」
「ぷぷっ。」
「夏目さん、もしかして、たらこでからかったこと気にしてますね。」
「やられっぱなしは嫌ですからね。」
こんなに穏やかに外を歩けるのはきっと安室さんの雰囲気のおかげだろう。
相手に合わせて会話をしてくれてるのがよくわかる。
探偵業で培われた話術なのかな。
朝出てくる時は、憂鬱な気分も少しあったのだが、こんなに楽しいのはほんと久しぶりだ。
カートを押す安室さんの横を歩きつつ、レジに向かっていると、ふと頭に何かが触れたのでそちらを向くと、安室さんの手だった。
「ん?」
「…あ、すみません、つい。」
「つい?」
「いえ、ごみが付いていたので。」
「ありがとうございます。」
急に男性に頭に触れられて驚かないわけがない。ゴミが付いていようと黙ってとるなんて!っておもったけど、ニコリと微笑んでいる安室さんを見ると、イケメンの特権だな。と、つい許してしまった。