第26章 あの日の夜に
「その言い方だと、届いたようですね。」
「え!?」
「何か言ってました?彼」
「何かって!?」
きちんと説明してくれないと、私には何が何だかわからないっ!
あわあわと慌てていると、居酒屋のカウンターの長椅子に座っていた昴さんがぐっと近くに寄ってきた。
背もたれのないタイプの長椅子で、昴さんの右手が私のおしりの後ろあたりについて、私の顔を覗き込むような格好だ。
「僕が付けたキスマークをみた彼は、何か言ってましたか?」
「………っ!?」
「見られたのでしょう?」
「いやっ…あのっ!」
「おや?まだ見られてない?ならまた後程つけましょうか。」
昴さんは指を私の首筋をすーーっと撫でつけた。
ぞくっとして、観念して答えた。
「見られました…」
またキスマーク付けられたらたまらない。
「それで、彼は何と?」
「…『受けてたつ』……と。」
「ほぉー。めぐみさんのその様子を見ると一歩彼がリードしているようですね。」
「リードとか…そういうのないですから…」
「おや?では既に彼とは恋人同士なんですか?」
「……。」
「違うようですね。ならまだ僕にもチャンスはある。」
「な、ないですっ!ないない!」
後ろにあった昴さんの手が私の腰あたりに触れた。
「一つ、忠告しておきましょう。」
「…忠告?」
「彼が一体何者なのか、僕も今調べている最中なのですよ。…君には難しい男かもしれない。」
「…難しい?」
何者ってどう言うこと?
毛利小五郎の弟子で、探偵で、喫茶店の店員さん…でしょう?
私が考え込んでいると、昴さんはカウンター内の店員さんに手を上げた。
「すみません、バーボンをロックで。」