第26章 あの日の夜に
一通り梓さんの愚痴やら大変だったことを聞いたら、本人もスッキリしたように電話を終えた。
「本…ありがとうございました。」
以前と同じ席。隣には沖矢さん。
コナン君と知り合いで、工藤新一の家に住む、大学院生。
この人もコナン君とこれだけ近しい人物なのだから、きっと悪い人では無いのだろうが…。
「どうでした?」
横でお酒を飲みながら笑う沖矢さん。
グラスの持ち方や飲み方がいちいち様になる人だ。
「私の頭には難しかったですけど、頭が悪いからこそ本当に推理なんてできないから、謎だらけでわくわくしました。犯人が分かった時なんて思いもよらなくて、びっくりしちゃって。」
「最後まで犯人が分からなかったんですか?」
「もちろんわかるわけないですよー。沖矢さんは途中でわかっちゃうんですか?」
「だいたいは。」
「ハラハラドキドキしながら読みました。犯人そっち!?って。」
「楽しかったようでなにより。」
柔らかい微笑みで見つめてくる沖矢さんに私は視線が泳いだ。
今絶対顔赤い。
「…『沖矢さん』。」
「え?」
「もう、昴とは呼んでくれないんですか?」
「あっ…別にあの、なんとなく…じゃあ、昴さん。」
「そっちの方が嬉しいです。」
昴さんの横に座り、下を俯いていると、サラリと髪の毛に触れられ横の髪を耳にかけられた。
ひぇ…!
どうしたらいいのかわからなくて、私は目の前のお酒をぐいっと口に含んだ。
「今日は日本酒は飲んではダメですよ。」
「はいっ、絶対飲みません!」
「まぁ、あの姿はまたいつか見たいものですが。」
頬を撫でられ、親指で唇をふにっと触られた。
「…っや」
私は昴さんの手をとった。
この人は本当に大人の色気が凄すぎる。
「そう言えば、以前の『宣戦布告』は届きました?」
「…っ!?あの…!あの宣戦布告って言うのがわたしにはわからなくて…あれは私に宛てたものじゃなかったんですか?」
「もちろん違いますよ。」
「…やっぱりそうだったんだ………。」
安室さんもそう言ってた。
自分に宛てたものだと。