第3章 たらこ
明日はあの爽やか三十路イケメンとお出かけかぁ…。
そう思うと急に緊張してきた。
家に帰ってからも、なんとなくソワソワしていまう。
どこに組織の人間がいるかわからないから、地味に地味に生きているのに横にこんなキラッキラ輝いてる人いたら目立って仕方ない。
いや、でも重要そうな人物だからこそやたらめったら組織の人間には会わないのではないか?待て待て、重要そうな人物だからこそ事件に合いそうだ…。
だから、あのちびっ子探偵には顔見知り程度で済ませているのに。
逃げるように隠れて仕舞えば、おねーさん、なんでかくれてるのぉー?とか、言われそうだし、だからといって一緒に行動なんてすれば今頃第一発見者の事情聴取を何度も受けることになっていただろう。
ポアロの梓さんの後ろでサポートしてる店員さんってくらいの認識で十分だ。
明日もそんな感じで、目立たず、地味に地味に行こう…。
朝、10:00。
ポアロ近くの駅ロータリー。
いつものように眼鏡。ハーフアップ。黒のスキニー。ジャケットだと堅苦しすぎるかと思ってカーディガンにしておいた。
地味に。
こんなに遠出は久しぶりだ…。
しかも、若い男性となんて、こっちの世界ではほとんどない。
元の世界に帰れさえすれば、こうやって陽の下でデートも出来るんだろうな…。
ふつうに彼氏を作って、買い物行って、手を繋いでって…
って思いにふけっていると、普通の車とは違うエンジン音が響いてきた。
白のスポーツカー。
運転席をちらりと覗くと安室さんだ。
あの爽やか三十路イケメンに、白のスポーツカー…。中でニコニコ手を振っている。
似合わなーーいっ!
なんて、絶対に表情には出せないので、こちらもにこりと微笑むと、なんとかセブンに向かった。
助手席でいいよね?って表情で聞けば、どうぞーって表情で返される。
「お邪魔します」
「低いのでお気をつけて。」
「こんにちは、安室さん。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ。バイト中梓さんとはお話しする機会は結構あるんですけど、夏目さんとはあまりないので、今日は楽しみです」
て、天然?
わざと?
タラシだ。しかも、いつのまにか梓さんって呼んでる!!
ヴォーンって重低音がお尻の下に響いて、クルマが走り出した。