第23章 バーボン
真っ黒のスキニーパンツにグレーのシャツ、上には真っ黒の、パーカーを羽織っている。
そして、白い手袋。
以前も手袋してる時があった。
…拳銃?
安室さんの右手には小さな鉄砲が握られている。
おもちゃ…じゃないよね?
「早くしてください。暇じゃないんですよ」
踵でぐりっとさらに強く踏み付けた。
「くそっ、なんでバーボンがここにいるんだよっ!てめぇなんかに言うことはなんもねぇーよ!!」
「別に言わなくていいです。持ってますよね?アレ。」
「な、なんでそれをっ…!」
「…そういえば貴方、娘さんいましたよね?」
「そこまで知って…!」
「二歳なんて可愛い頃じゃないですか…名前は確か…」
「やめろっ!やめてくれ!わかった!渡すから…たのむから…」
「安心してください。渡してくれさえすれば娘さんに手は出しませんよ。」
血だらけで涙を流す男は靴の裏から小さな何かを取り出し、安室さんに手渡した。
「確かにいただきました。その傷は致命傷にはならないでしょう。しかし早めの受診をおすすめします。」
「……」
放心状態の男にそう告げると安室さんはやっと肩から足を退けた。
安室さんが、その場から立ち去ろうとしていると、私とは反対側の向こうから3人くらいの男たちがバタバタと走ってきた。
「いたぞ!バーボンだ!撃てっ!!!」
「っっ!!」
路地に銃声が響いた。
私は驚いてその場にしゃがみ込んだ。
安室さんはこちらに向かって入ってくる。
このままだと鉢合わせになって見つかってしまう。
「うっ…」
安室さんの小さな声が聞こえた気がした。
怪我をしたのだろうか。
しゃがんだまま再び道の方を覗くと、すぐ先に安室さんが倒れていた。
「…っ!」
倒れていたと言っても、転んだだけですぐに起き上がろうとしている。しかしうまく立てないようだった。
左足を押さえている…足を…撃たれた?
私は帽子を一度取り、髪の毛を中に入れて再び深く深く被り直すと、立ち上がった。
「…逃げなきゃ…」