第21章 調整はおまかせ
私の膝に頭を預けて、こちらをじっと見てくる安室さん。
下からの顔はあんまり見られたく無いな…!
二重顎になってたらどうしよう!
「くくっ、瞬きしすぎ。」
「見ないでくださいっ」
私は安室さんの目に左の手のひらを置いて、見えないようにした。
右手は頭を撫でたまま。
「あー、寝ちゃいそう。」
「少し寝ます?お客さん来たら私いきますから。」
「さすがにいいよ。これで充分。」
「じゃあ、お客さんが来るまでの間だけですよ。」
ふぅっと安室さんが息を吐いた瞬間、本当に寝たのかと思うくらい力が抜けたのか、ズシリと頭が重くなった気がした。
「綺麗な髪の毛。」
「…そう?子供の頃は結構苦労したよ。」
「子どもは素直すぎて怖い時ありますからね。私は好きですよこの髪の毛。」
「髪の毛だけ?」
「だけっ!」
「残念。」
自分は私への気持ちを言わないくせに。
知ってるからな。
安室さんは甘えたり、怒ったり、心配してくれたり、そういう事は私にしてくるけれど、自分の思ってることや気持ちは言ったことがない。
そのくせ、『惚れた?』って聞いたり、今みたいに私には言わそうとするからタチが悪い。
私からは絶対言わないならなっ!
わしゃわしゃっと安室さんの髪の毛を撫で回した。
「こらっ。」
「ばーかばーか。」
穏やかな時間が流れていると、テーブルに置いてあった私の携帯が鳴った。
「またマスターからです。………んー、金曜日って言ってた取材が水曜日から金曜日のどこになるかわからなくなったみたいです。何やら大尉がいないとだめみたいですね。」
「…困りましたね。出来れば僕は出たくないのですが。」
私の膝から起き上がり、また丁寧な口調に戻った。
私がぐちゃぐちゃにしてしまった髪の毛を整えている。
「じゃあ、その辺は臨機応変に私と調整しますよ。」
「すみません。探偵をしていると張り込みしたり変装したりすることもあるので、なるべく顔を出したくなくて。」
おっちゃんはバリバリメディア出てるけど…!
下積みは大変だな…。
「うまいこと梓さんと被るようにします。」
「助かります。…おや、僕にもマスターから電話です。」
ポケットから取り出したスマホを耳に当て何やら話をし始めた。