第18章 ポアロにて
本当に優しい人だな。
ふっと、笑みが溢れてしまった。こんなよれよれの状態でも私をきにかけてくれて。
「ホント、仕方ない人ですね。」
そう言って私は持っていた売り上げ金をいったんレジに戻した。
「何食べますか?」
「いえ、実は色々もってきたんですよ。今日いそがしかったんでしょう?」
「…なんで?」
「シンクに残った洗い物と先程めぐみさんが持っていた売り上げ金を見たら一目瞭然ですよ。」
「うん、今年のクリスマスは繁盛しました。」
安室さんはスーツの上着を脱ぐと私のパソコンの椅子にかけた。
シャツの袖のボタンを取りながら、こちらに向かって歩いてくる。
「僕が来てよかった。手伝いますよ。」
シンクに溜まったコップたちに手を伸ばした。
「え?いいよ。私の仕事!安室さんはソファに座って休んでください。コーヒーでも飲みますか?」
「めぐみさん。」
「はい。」
「早く終わらせたいんです。」
「…?」
「言ったでしょう2時間しかないと。」
「だからこそ休んでください。」
「貴女に癒してもらいたいんです。それが一番だと言ったでしょう。早く終わらせて僕を癒して。」
「…っ。」
私が目を開いて、安室さんを見ているとぐっと顔を近づけて頬にキスをした。
ちゅっと子供みたいに音を立てて離れると、にんまりと笑った。
「さっ、続きをしたいんで早く終わらせましょう。」
…売り上げ金、一枚一枚噛み締めて数えてやろうと思った。
「めぐみさん…わざとゆっくりしない。」
「あ。ばれました?それより、探偵業忙しそうですね。」
「…まぁ、年末年始は特にね。」
「ふーーん。」
上のおっちゃんは家にいるみたいだけど。
彼ほど有名になると逆に依頼の数は少なくなるのかな。
安室さんはすでに洗い物を終え、店内の掃除をしてくれていた。
「安室さん…ごめんなさい、疲れてるのに。」
「そんな疲れてるように見えます?」
「だって2時間後にはまた仕事なんでしょう?」
疲れない方がおかしい。
いつかぶっ倒れるんじゃないだろうか。