第18章 ポアロにて
クリスマス当日。
「なんで。こんな忙しいの。」
毎年常連しかこないって言っていたはずだ。
だから私一人でまわして、早めに閉店。夜はマスターのバーの方のお手伝いをしようと思ってたのに。
ひっきりなしにお客さんがくる。
みんな飲み物ぐらいしか頼まないのが救いだった。
先程なんでと言ったが、本当は原因はわかっている。
「すみません、今日安室さんはおやすみですか?」
「はい、すみませんお休みなんです。」
これだ。
女性客はどうやら安室さんのクリスマスの予定が気になるようだった。
すこしでもクリスマスを安室さんと過ごしたい人達や、クリスマスに出勤してるかどうかで恋人の有無を確かめているようだった。
「おやすみなんですね…じゃあ、今日はデートなのかな…」
「わからないです、ごめんなさい。せめて、ゆっくりここでコーヒー飲んでいってください。」
「えー!?あむぴいないのー!」
綺麗に着飾った女子高生たち。
流れ作業のように不在を告げると、何も頼まずさっさと帰っていった。
クリスマス、綺麗にした自分を見てもらいたかったんだろうな。
いつもなら来たんなら注文くらいと思うところだが、今日に限っては帰ってくれたことに感謝した。
夕方4時も過ぎるとやっと人は少なくなった。
もう今日は5時には閉めてやる。
最後のお客さんが出てきったところで、さっとクローズドの札に変えて鍵を閉めた。
ほっとひと息ついて、売り上げ金を数えていく。
静かなクリスマスだ。
とても忙しいクリスマスだった。
裏口が開く音がした。
マスターだろうか。クリスマスは夜のバーが忙しいはずだから私に何かやってもらいたいことでもあったのかもしれないと思い、バックヤードに顔を覗かせると安室さんだった。
「あれ?……安室さんって実は暇なんですか?」
しょっちゅう来てないか?
「時間は作るものなんですよ。2時間だけ作れました。1日は無理でしたけど。」
たしかにすこし疲れてそうだ。
スーツ姿ではあるけれど、髪の毛の艶も肌の質もいつもと違う気がした。
2時間だけでも家で寝れば良いのに。
わたしがクリスマスに一人でポアロにいたから…?