第17章 みんなで
何気なく話したつもりだったのだけれど、梓さんにとってはそうでもなかったようで、私を見ながらだーーっと涙を流した。
「めぐみちゃんっ、大変だったんだねー!」
「まぁ、昔はね。今は楽しく過ごせてるよ。」
「うん!うん…!いっぱい恋愛しよう!安室さんもダンスの彼も両方行こう!」
「いや、両方て…」
「いいの!どっちがめぐみちゃんを本当に心から幸せに出来るのかちゃんと見極めないと!」
「私はどちらかというと幸せにしてあげたいタイプだなー」
「…なんっていい子なの!だめ!めぐみちゃんは幸せになるの!ならなきゃダメよ!」
「ふははっ、梓さんありがとう。」
「2人といっぱいデートして吟味して…なんなら、他の男性も紹介しようか?色々選ぼう!身体の相性も大事だよ!」
「おーい、言い方最低だぞー」
身体の相性て…全員と寝ろというのか。
メニューでペシと梓さんを叩くと、てへと、舌をだす梓さん。
閑散とした店内を後に私はバックヤードに下がった。
「ねーねー、めぐみちゃん。」
「はーい。」
さっきの話から数十分後、暇な梓さんはひょこりと顔を覗かせた。
「今日果物残りそうだし、タルトでもつくらない?」
「いいね。」
「めぐみちゃん、忙しい?」
今はマスターに頼まれた夜のバーでのお仕事をしていた。
が、別に今することでもないので、私は笑って首を振った。
「ううん、一緒に作ろっか。」
「午後からくる安室さんの分も作ってちょっと早いけど、クリスマスケーキにしようよ。」
「いいね、安室さんにはいつも試作のお菓子もらってるしちょうどいいね。」
小さな手のひらサイズのタルト生地はすでにある。
あとはカスタードをつくるだけだ、梓さんにカスタードは任せて私は色々な果物を切った。
ついでに私たちのまかないも。
簡単につくったサンドイッチも食べ終わり、
タルトももうすぐ出来上がるぞ、という時に裏口が開けられる音がした。
安室さんだろう。