第17章 みんなで
「気づいてないだけで梓さんも一緒だと思うけどなー。安室さんだよ?」
「いーえ!!私の勘は当たる!安室さんにとってめぐみちゃんは何かある!気になってるはず!」
カウンター内で拳を握り力説する梓さん。
「こんな地味なのに…」
「だーめ!卑屈になんないのっ!」
十分綺麗だよ!と、人差し指で私の鼻をつんっとつついた。
「うーん…でもやっぱり私には私のペースでいきたいから、あんまり安室さんからかわないでね。勘違いしちゃった安室さんがメールしてきたから。じゃないと、シフト開店準備ばっかりするからね。」
「睡眠大事!!それだけは阻止したい!謝るからもうしないからゆるしてー!」
「分かればよろしい。そして、私の写真は消しておいてください。」
「はーい。」
梓さんは唇を尖らせ、しぶしぶ携帯の中の私の写真を消し出した。
「めぐみちゃんは安室さん好きにならないの?」
「ん?」
「それとももう好きとか?」
「んー、わからないの。」
「わからない?」
トイレ掃除から出てきた私に梓さんが聞いてきた。
おばあちゃんはとっくに帰っていて店内は静まり返っていた。
梓さんは洗い物を終え、手を拭いている。
そんなのんびりした時間に急に再び安室さんの話題になり、私は咄嗟にそのまま正直に答えたしまった。
『別に好きでもないよ』と、適当に答えればよかったのに。
「あれだけのイケメンですから、ドキッとしてしまうのは確かにあるんだけど…梓さんはないの?」
「私にはステキな彼がいますからね。ない!」
「ふふ、そっか。私は5年前までは自由に恋愛してたんだけど、色々あって家族もいなくなって急に1人になっちゃったから。」
組に入って色々した、女としての武器を使った。
相手を惚れさせたり、お酒の席で相手が喜ぶことをしたり。だけど、それは恋愛じゃない。
「お金もあんまりなくって、生きるの必死だったんだよね。恋愛なんてするひまなくて。だから、なんか好きとかよくわかんなくなっちゃった。恋愛してみたいなーとは思ってるよ。」
だけど、今も私は黒の組織に追われてる。
隠れながら恋愛なんてきっとまだ難しいーー…。