第17章 みんなで
安室さんが裏口から出ていき、再び静かなポアロになった。
ブラインドはまだ上げてないため、いまだ薄暗い。
カウンター内の床にへたりこんでしまって数分がたった。
準備しなくちゃダメだと頭ではわかっているのに、身体がうまく動かない。
「たて…立つんだ…私。」
目を閉じると思い出されるのはつい数分前のできごと。
『ほら…口開けて』
先程の安室さんを思い出し、私は声にならない叫びをあげそうになった。
「思い出すなっ!…むりっ!くそ!イケメン滅びろ!
何が口開けろだ!ばかばか!」
頬をぱちぱちと叩き、ようやく私は立ち上がった。
急いで開店準備を始めた。
■□■□■
開店してしばらくすると梓さんが出勤した。
裏口から明るい声の挨拶が聞こえてくると、ロッカーで準備をし始めたようだ。
「おはよー」
「おはよう、めぐみちゃん」
今日は珍しくお客さんは近所のおばあちゃん1人だ。
のんびりしていてたまにはこういうモーニングタイムもいい。
「あ。思い出した。梓さん、安室さんに色々言い過ぎだよー。」
「えぇー!?何何?何か言われた!?連絡あったの!?」
「…いや、ない。何もない!」
「うそだー、だって私が安室さんに写真送ってからまだシフトかぶってないはずだよね?それなのにそんなこと言ってくるってことは…ふふふふふ。」
しまった。
安室さんが朝来たことは内緒だった。
朝の出来事に動揺しすぎて忘れてしまっていた。
私はどうしたものかと考えを巡らせた。
「安室さんとバイト以外で会った?呼び出された!?」
「…ない!ないない!普通に…メール来ただけ…だよ。」
「えー?それだけ?」
「ていうか!」
わたしは腰に手を当て、梓さんに向き直った。
「勝手に私の写真送っちゃダメ!安室さんを煽るようなこともだめ!」
「ごめーん…だって、安室さんめぐみちゃんのこと気になってるようだったから。」
「そんなことありませんっ。」
「あるわよー!だって、頭撫でたり、めぐみちゃんが高いところに手を伸ばしてるとそっと腰に手を添えたり…そんなこと私にはぜっったいしないんだから!」
…そんなことがあったのか。
全然気付かなかった。