第16章 似合う
冷蔵庫に向かいアイスコーヒーを取り出し、テイクアウト用の容器を準備している間、安室さんは私の後ろに立ち私をじっと見ている様だった。
スーツ姿…銀行強盗から助けてくれた時もその格好だったな。
チラリと安室さんを盗み見て、どきりとした。
いつもの安室さんと雰囲気が違っていてカッコいい。
普段見ることがないからより一層そう思えた。
「なんです?チラチラみて。」
「え!?いや、スーツ珍しいなって。」
「あぁ、ちょっと探偵業で潜入しなくてはいけなくて。あまり他の人には言わないでいただけると助かります。」
「安室さんのことは言わないですよ。探偵さん大変そうだもの。でも…なんだろ、その姿のほうが安室さんっぽいかも。」
アイスコーヒーを容器に入れ、蓋をしてストローを棚から取り出しながら私は何気なくそう言った。
「…僕っぽいですか?」
「うーん、なんていうか、たまにちょっと怖い顔したり、推理してるのかわからないけど考え込む姿とか、さっきみたいに丁寧な言葉遣いじゃなくなったり。
そんな姿の方が安室さんの本当の顔なのかなって。お店用じゃなくて。」
「めぐみさん…」
「ふふ、実は私最初安室さんがナナちゃんに乗ってる姿、似合わないって思っちゃったんです。でも、そのスーツでカッコいい安室さんならとっても似合いそう。真っ白でかっこいいスポーツカーをガンガン乗り回しそう。」
はい、どうぞ。
と、アイスコーヒーを安室さんに差し出した。
じっと私を見ながらアイスコーヒーを受け取ると、そのままカウンターに置いた。
「?」
「めぐみさん、はぁ…もうホント貴方は何度僕を…まったく。」
安室さんが一歩私に詰め寄ったと思ったら、腕を伸ばしてきて私をぎゅっと力強く抱きしめた。
「安室さんっ!」
ぎゅうぎゅうと腕ごと力一杯抱きしめるもんだから、まったく身動きが取れない。
安室さんの肩の辺りに顔が当たり、耳には安室さん吐息。
ファンデーションがついてしまうとかそんな事まで考えてしまった。