第16章 似合う
「梓さんから何を聞いたんですか?絶対大袈裟に言ってますよ。」
「彼女は何かしら僕に協力してくれているみたいなんですよ。僕に強敵が現れたと言って、最初この写真を見せられたんですよ。先越されるぞって。」
梓さん…
ぜったい面白がってる!
「それから昨日、めぐみさんが酔ってこの男性にお持ち帰りされたとメールが来ました。」
「嘘です!嘘嘘!もうっ、梓さんに揶揄われてますよ、安室さん!」
「…うそ?じゃあ、キスも…」
そう言われて私は顔が熱くなった。
抱かれては無いし、記憶に残っては無いが、恐らくキス魔の私はキスしたのは間違い無いだろう。
「…なんだその顔は。」
「いやっ、これは!」
「キスはしたんだな。」
「え!?」
ギラリとした目で見つめられ、目を逸らせなかった。
「あれだけしても俺の気持ちはわからないか。」
お、俺!?
安室さん俺って言っていただろうか。
ニコニコ笑って僕って言ってなかっただろうか。
「あの…安室さん…私仕事しなきゃ…」
「あと10分ある。それに僕もすぐ行かなきゃいけない。」
「探偵業?」
「…まぁそうですね。」
すっと私から目を逸らし身体を離した。
前に安室さんがいなくなり私は息をすぅと吐いた。
「今度僕とも飲んでください。」
「私と飲んでも楽しくないんじゃ…」
午後からポアロだというのに、スーツを着なくてはいけないくらいの依頼が来ている。
一日中仕事をしているのに、ゆっくり休んでほしい。
「言ったはずです。貴方の横が1番の癒しなんです。」
「…っ。」
「今もどうせ、忙しいから休んでほしいとか考えてたんじゃありませんか?」
「…。」
その通りだと言えず、私は俯いた。
「僕は貴方と出かけたいんです。いいですか?」
「…はい。」
また連絡します。と安室さんは裏口から出て行こうとした。
わたしはふと思い出し、安室さんを呼び止めた。
「あ、まだ時間あります?」
「…なんでしょう。」
「昨日少しアイスコーヒーが残ったんです。昨日ので良かったら持っていきますか?」
「いただきます。」
いつもの柔らかい安室さんの笑顔になった。