第142章 風見裕也の仕事
自分も服を上等なものに着替え、耳に付けたインカムで合図を受け取ると、降谷さんの横に立った。
「では、降谷さん。式の流れを説明いたします。」
「式の…?」
「あー、はい。姫がかなり緊張しているようで、本番さながらのスケジュールでまずはリハーサルしたいそうです。」
「わかった。」
「まずは、参進の儀をします。巫女などは流石におりませんので、公国のボディガードか衣装を着て、新郎新婦を誘導する手筈になっております。」
「花嫁行列だな。僕も並ぶのか?」
「はい。姫の横で護衛をお願いします。」
「しかし、こんな宮殿で和装とはちぐはぐだな。」
部屋の中を見渡しながら降谷さんは言った。
「いえ、大使館の裏の庭は純日本庭園になっているそうです。そこで行います。」
「ほぉー。」
さすがは親日国家。と、降谷さんは少しわくわくしているようだった。
「ではまず、そこに向かいましょう。」
執事と自分とで降谷さんを誘導し、階段を降りて裏庭へと向かった。
「今日は参列者などはほぼいません。大使館の職員が代わりに椅子に座ったりしております。」
「彼らの中に脅迫文を送った可能性のある者はいるのか?」
「いえ。信用ある者しかいないそうです。自分は降谷さんの後ろでこの傘で周りを警戒します。」
「…傘?」
私は先程職員から受け取った大きな朱色の傘を持ち上げ広げた。
「“しゅがさ”と言うそうです。後ろから花嫁をこれで差しかざします。」
「へぇ。」
「武器にもなりますからね。では、姫のところに行きましょう。あ。降谷さん、指輪をお預かりします。」
「…あぁ、見られてるかもしれないもんな。僕が偽物だとバレたら困るな。」
人差し指から指輪を外し、受け取るとそれを大事にポケットにしまった。