第142章 風見裕也の仕事
公国の執事の方が降谷さんの着付けの手伝いをしてくれ、防弾チョッキの上からでもうまく着せてくれた。
袴は仙台平の縞模様。
黒五つ紋付き羽織袴は、漆黒で降谷さんの金の髪がよく目立った。
「かなり上等な服だな…さすが公国だけある。」
「よくお似合いです。こちらを。」
「扇まで持つのか。」
「リハーサルとはいえ、姫にとっては重要な式ですので。」
「…そうだな。うまく動けるよう警備体制を頭に入れておきたい。資料はあるか。」
「今手元にありませんので、後程お持ちします。」
「早めに頼む。」
草履を履き、羽織紐をきゅっと結ぶ降谷さんの姿は男の自分からみても美しいと思うほどだった。
「写真を撮ってめぐみさんに送りたい気分です。」
「まぁ、近いうちに写真だけでもと言ってある。」
「…そうですか。」
写真だけでなく式を開いたらいいのに。と、思ってもゼロである彼にそんなことは言えなかった。
袴の後ろに銃を隠せないかと鏡の前で試行錯誤していると、ノック音が聞こえてきた。
「失礼いたします。姫がご挨拶したいと申しております。」
「どうぞ。」
執事の後ろから白い着物を着た女性がひょこっと顔を出した。
にっこりと笑って入ってきた黒髪の女性は“姫”といっても無邪気そうな年ごろの女性だった。
打掛や綿帽子などはまだ付けておらず、ゆっくり歩いて降谷さんの前に立った。
着物の2人が並ぶとそれは絵になって、めぐみさんがここにいないことで、複雑な気分になってしまった。
「あなたが…へぇ、ふふ、楽しみです。よろしくお願いしますね。」
「日本語お上手ですね。そういえば新郎の方が日本人でしたね。警察庁の降谷です。今日はご安心してリハーサルしてください。」
「…ふふ。えぇ。」
姫はにこにこと終始笑顔で話を終えると、部屋を後にした。
「狙われていると言うのに、明るい女性だったな。まぁ、結婚を控えてるしな。」
「そう…ですね。」