第140章 I will.
降谷さんは私の目を見つめながら、ポケットに手を入れ箱を取り出した。
「…?」
「私、降谷零は、めぐみを妻とし…。」
降谷さんは箱を開けながらゆっくりと話し出した。
「降谷さん?どうしたの?」
降谷さんは私の問いかけには答えず、微笑みながら続けた。
「健やかなる時も 病める時も、喜びの時も 悲しみの時も、富める時も 貧しい時も…。」
ドラマとかで聞いたことのあるセリフだ。
私は驚いて目をパチクリとさせたが、降谷さんは気にせず私の左手を持ち上げた。
「貴方を愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い、この命ある限り真心を尽くすことを誓います。」
綺麗に輝く指輪をゆっくりと私の左手の薬指にはめていく。
私は驚いて声が出なかった。
「めぐみが、もっと自分がちゃんとしたら『降谷』と名乗りたいと言っていたから待っていたんだが…、君が僕のために防護服を脱ぎ捨て、『死ぬ時は一緒だ』だと言った時、心に決めたよ。」
「…っ。」
左手の薬指のキスを落とす降谷さんの顔が滲んでよく見えなかった。
「わ、私…夏目めぐみは……!」
降谷さんみたいに正式な言葉なんて覚えてないし、
かっこよく相手に伝えるなんて出来ないけれど…!
涙を拭いて、降谷さんの手を取った。
必死で紡ぐ言葉を降谷さんは優しい表情で聞いてくれた。
「降谷零の時も、安室透の時も、バーボンの時も…、どんな貴方でも、受け止め、支え…っ、傷付いた時は癒し、帰る場所となり、この命ある限り…、…っ…、ずっと貴方を愛し続けることを、誓いますっ…!」
降谷さんは手を引き抱きしめてくれた。
「僕のためだけの、めぐみらしい誓いの言葉だな。」
ぼろぼろと流れる涙は、降谷さんの服に吸い込まれていった。