【R15】キャラメル デェア ディアボロ【ハイキュー夢小説】
第6章 角名倫太郎と飴玉
「口渡ししたら彼女の口内で飴を舐め合うんだ。自分の舌の上で転がし、彼女の舌の上で転がせる。そうして口中に飴の味が広がりきったら、口を外して彼女の好きな所を口にする」
「…………」
ディープキスをしながら飴を舐め合う。どんなプレイだと思いながらも、角名は黙って話を聞いていた。
「好きな所を伝えたらまた口付け合い飴を舐める。そしてまた好きな所を伝える。それを五回繰り返したら飴が無くなるまで舐め続けるんだ。そして舐め終わった後に自分の名前を呼ばせる。普段と違う呼び方をしたら、彼女はお前に惚れた証拠になる」
「……何それ?麻薬か何か?」
飴を舐め合っただけで相手の心が変わるなんて聞いた事が無い。怪しさしかない説明に警戒心が出始めていると、少年は得意そうな声色で答えた。
「麻薬ではない。これは悪魔の惚れ薬なだけだ」
惚れ薬。しかも悪魔の。
この世に悪魔もいなければ惚れ薬も存在しない。
つい彼女と両想いになりたくて、見知らぬ人の妄言に付き合ってしまったと溜息を付いていると、少年は飴玉を角名の手に押し付けて言う。
「奪い取りたくないのか?彼女の事、他の男に取られていいのか?」
「…………」
問い掛けに反論も肯定も出来ずにいると、少年は角名の手から手を離し、言った。
「飴はもう渡したし、使うも捨てるもお前の好きにすればいい」
そう言って少年は歩き去ろうとしたが、忘れていた、と言った顔で立ち止まって口を開く。
「危ない危ない。もう一つの方を伝えるの忘れていた」
その言葉に角名も自分の手を見た。
飴玉は二つ。でも説明されたのはピンク色の飴玉の方だけだった。
紫色の飴玉の説明は何もされていない、と思うと少年は続けた。
「紫色の飴玉の方はな……」
◆
角名の制服のポケットの中には飴玉が二つ入っている。
馬鹿げた話だと思いながらも、捨てる事が出来なかったのだ。
妄言に縋りたくなる位に彼女の事が好きなのかと、角名は前を歩く彼女の後ろ姿を見つめた。
日が傾きかけ、オレンジ色に染まっていく校舎の中を二人で歩く。
何時もの場所に行こうとしたのだけれど、先客がいたのだ。それもイチャイチャしていた何処かのカップルが。
彼女は気まずさから行先も決めずに移動をして、今に至る。