【R15】キャラメル デェア ディアボロ【ハイキュー夢小説】
第6章 角名倫太郎と飴玉
「…………」
人が通らない道なのだろうか、と思いながら角名は歩いていた。
歩いて数分、まだ日も高いのに誰ともすれ違わない。
まぁ別に誰かとすれ違いたい訳でも無いし、と歩を進めていると、生温い突風が吹いた。
目にゴミが入ったな、と目に手を宛てて取って前を見ると、何時からいたのだろうか。
自分と同じ年頃の少年が一人立っていた。
細道で通行の邪魔になっていただろう、と道を譲ろうとした瞬間。少年は角名に話しかけてきた。
「お前、好きな奴がいるだろ?」
見ず知らぬ他人からの突然の質問。何故そんな事を尋ねられたのかと思いつつも、彼女の顔が横切ったので、角名は正直に答えた。
「いる。まぁどうせ向こうは好きな奴がいるから、関係ない話なんだけどね」
自分に向かって皮肉めいた言い方をすると、少年は口角を上げながら言ってきたのだった。
「もし、そんな彼女が自分に惚れる方法があるとしたらどうする?」
「……は?」
何をこの少年は言っているのだろうと、角名の眉間に皺が寄る。
頻繁に話をして手作りお菓子の試食を続けていても、彼女は全く自分を男として見ていないと言うのに。
そもそも好きな相手がいて、その相手の為に必死になっている彼女が自分に惚れる訳がない。
あり得ない事を無責任に言っている、と変人に声を掛けられたと判断して逃げようかと思うと。少年の手が動いた。
少年は自分のパーカーのポケットに手を入れると何かを掴み、角名の方へ差し出してきた。
少年の手の上に乗っていたのは二つの飴玉。
濃いピンク色の飴玉と紫色の飴玉だった。
「……何それ」
そう尋ねると少年は楽しそうな口調で答えた。
「これは欲望を叶える魅惑の飴。彼女の心、奪い取ってみたくない?」
彼女の好意を侑から自分へ変えさせる。奪い取れるならば取ってみたいに決まっている。
彼女が侑に恋をしている様に、角名は彼女に恋をしているのだから。
「彼女と結ばれたかったら、最初はこのピンクの飴から使うんだ。二人っきりの場所で口に含んで、彼女に口渡しして与えるといい」
少年の言葉に、それは彼女とキスをしろ、と告げられていると角名はすぐに理解した。
付き合ってもいない相手にキスをして、飴を口移しする?何を無茶な事を言っているのだろうと反論しようとしたが、少年の口の方が早い。