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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第39章 甘えさせ上手と言われたい ✳︎✳︎



杏寿郎さんが私の中にはいってくれる時は緊張するけど、気持ちが凄く高まる。すんなり来てくれる時もあるし、少しじらされてしまう時もある。

その度に振り回されてしまう私だけど、彼と一つになる喜びや高揚感は何度経験しても心の底から満たされているなと感じる。

安心するし、このままずっと大好きな彼と重なっていたいといつも思う。

「杏寿郎さん」と後ろの恋人に声をかけると、少し慌てた声が届いた。

「すまない! その…言葉を選んだつもりだったが、俺はどうもこのあたりの塩梅が上手くない」

「違いますよ。確かに凄く恥ずかしかったけど…」

ぽつぽつと言葉が途切れる。でもしっかりと彼に聞こえるように伝えた。すると安心した杏寿郎さんは早速私に提案をして来る。

「そうか、ならば安心だ。では早速!」

「あ、今は! 今はまだダメ、です…もう少しこの状態を満喫させて下さい」

「む、承知した…」

彼の声しか聞こえなくても、眉毛が垂れ下がったのが容易に想像出来た。ちょんと顎が私の頭に乗せられる。こういう所本当に愛おしい。


「杏寿郎さん、やっぱりせっかち」

「…仕方ないだろう。好機を掴む為には今だと思った時に動かねば。逃してしまう」

「私、好機の対象になってるんですね。嬉しいです」

どうしよう、顔がにやけてにやけて締まりがなくなりそう。好きな人が自分の事を好きでいてくれるって、本当に幸せだな。

それから二人の間にしばらく沈黙の時間が流れた。
ただ恋人が後ろから抱きしめてくれているだけだけど、体の中心部からじわじわと心地よい感覚が放射状に広がっていく。

そろそろ彼の顔が見たい。
くるりと杏寿郎さんの方へ体を向けると、一瞬だけきょとんとする恋人がそこにいた。

「あれ? 杏寿郎さん、どうしたんですか?」


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