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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第35章 心炎八雲、今宵も甘えて混ざりあって ✳︎✳︎



——— 翌朝、六月十七日。

「おはよう、七瀬! 朝稽古をやるぞ!」
「んん、杏寿郎さん、腰が辛いです……」

隣で気持ち良さそうに寝ている恋人に声をかけると、腰をさすりながら眉間に皺を寄せる七瀬だ。
開いた焦茶の双眸にはとろんとしているが、戸惑いの感情も宿っている。

「すまない、それは本当に申し訳ないとしか言えないが…」

彼女の左頬をゆっくりと撫で、口付けを一回贈った。

「しかし、稽古は別だ。鬼殺は待ってはくれない!」
「ええ……」

それからしぶしぶ体を起こし、身支度を済ませた彼女と共に庭に向かう。







朝稽古が全て終わると、向かいから杏寿郎さん…と声をかけられる。どうした?と返答すると、腰の柔軟を続けながら、彼女は言う。

「稽古で出来ない事は実践では出来ない。ではなかったのですか?」

じと…とねめつけるような視線を寄越す七瀬に対し、さて何の事を言っているのか?と、俺は少しだけ考えを巡らせた。

—— すると思い浮かぶのは、昨日初見した後にすぐさま放った〈捌ノ型〉だ。口に出してみれば、相変わらず察しが良いですね…と彼女は俺に言った。


「昨日捌ノ型は初めて見たはずです。なのに何故初見だけで杏寿郎さんは出来たんですか?」

「うむ! 一言で言ってしまえば、例外だな!」
「え?例外?」

七瀬は顔に疑問符をたくさん浮かべ、首を傾げて聞き返して来る。

「捌ノ型は玖ノ型に繋がる型だろう?」
「あの一瞬でそこまで把握を??」

信じられない……鳩が豆鉄砲をくらうとはこのような事を言うのかもしれない。七瀬はそれに近い表情をし、ぽかん…と口を開けてこちらを見ている。

「煉獄と同じように捌ノ型は炎の龍の斬撃だった。なるほど、と即座に思ってな。恐らく型の出し方は似ているだろうと判断した」

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