第6章 呼吸についての記録帳 (壱) 〜師範編〜
壱ノ型 —— 不知火
全ての炎の呼吸の基礎となる型。自分が一番得意としている技だ。
弐ノ型 —— 昇り炎天
近距離攻撃に対しての回避技としても有効。継子がとてもやりやすそうにしているので、彼女の得意な型かもしれぬ。
そこまで書いて、傍に筆を置いた。
——これは俺が呼吸の記録として書きとめているものである。
継子が記しているのを見て、面白そうだと感じた為だ。尚これは秘密にしておく。全ての型を書き終えた時、沢渡に知らせるつもりだ。
「師範ー?湯浴みの用意が出来たので、お先にどうぞ」
「ありがとう、今行く!」
噂をすれば何とやら、だ。
俺は和綴じの冊子をパタンと閉じて湯浴みに向かうべく用意を始めた。