第26章 七十ニ時間分の恋慕 ✳︎✳︎
「これで、おそろいです」
彼女は三つの赤い花をゆっくりと撫で、それぞれに口付けをした。
『あなたが大好き…』
直接口には出していないが、そんな思いを感じる。七瀬が一回一回大事に唇を当ててくれたからだ。
「ここは見えないから、三つでも大丈夫ですよね?」
む……そんな事を言ってくるか。
「君も言うようになったな!そうさせたのは俺だが」
はい、と一つ頷くと彼女は唇を下に下に這わせながら、一回一回口付けをゆっくりと落としていく。そうして男根に口元が辿りついた。どうやら悩んでいるらしい。やがてやり方を思い出したのか、そうっと俺の昂りを掌で包み、律動を始める。
「は…あ……」
自分の口からしぼりだすような声が出る。
それを確認した恋人は次にそれをゆっくりと口に含んだ。そのまま歯をたてないように、舌を使って丁寧に優しく愛撫してくれる。
先日触れてくれたのは手だった。今日は彼女の口が懸命に触っている。どちらも良いが、より気持ちが昂ってしまうのはやはり…
「はあ……七瀬……いいぞ……」
彼女が包んでくれている場所の温度が上昇していく。だんだんと硬さも増してピン、と上向きにもなる。
「くっ……七瀬、口を離せ……」
ふるふると首を振って、恋人はそのまま続ける。下半身が燃えるように熱い。
「あっ、離して、くれ……!」
次の瞬間、彼女の口に己の白濁がグッ……と飛び込んだ。
途端に訪れる脱力感。七瀬はそのまま吐き出す事なく、自分の口にある物をごくり、ごくりと飲み込む。
「はあ……」
彼女は深呼吸を一つ落としながら、口元を手の甲でグイッと拭う。
それからこちらに顔を向けて近づいて来たので、ふわふわした浮遊感と共にゆっくりと体を起こした。