第23章 岩柱・悲鳴嶼行冥
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「ダメだ……もう眠い…」
七瀬は朝食を済ませた後、ふらふらしながらも何とか自室へと帰って来た。昨日から杏寿郎は任務へ出ており、まだ帰宅していない。こう言った場合、朝の稽古は自主稽古となる。
炎の継子は杏寿郎が不在でも稽古を欠かした事はないが、昨晩の任務は単独での任務。
怪我こそなかったが、討伐になかなか手こずり、何とか粘った末に頸が切れたのだ。
布団を押し入れから素早く出し、さっと敷いた彼女は、掛け布団も出さずに倒れるように就寝した。
「………!、……七瀬、七瀬……!」
「ん……、あれ? 杏寿郎さん、どうして私の部屋に?」
「千寿郎が十二時を回っても、昼食に来ないと言って気にしていたぞ。故に俺が呼びに来たのだ」
「え! もうお昼なんですか??」
午後十二時半。
太陽がちょうど南天に移動した頃、任務から先程帰宅した杏寿郎に起こされ、七瀬は目を覚ました。
「父と千寿郎なら、先に昼食を取るよう伝えて来た!だから急がずとも問題ないぞ」
「うわあ、お気遣いありがとうございます……」
「単独任務は骨が折れるからな! 俺も帰って来たばかりで、腹が大層減っている。共に行かないか?」
「……はい! 行きます……」
髪と着物を手早く整えた七瀬を、杏寿郎は一瞬だけ抱きしめる。ふふふとあっという間に笑顔になった彼女に、彼は触れるだけの口付けを施し、手を繋いで廊下へと誘(いざな)った。
——— と基本的に仲の良い二人だが、この先はほんのちょっとした事がきっかけですれ違ってしまう。
初めての喧嘩、である。
仲違いしていた時、一体杏寿郎はどういう心境でいたのだろうか。
話は第二十五章へと続く……(二十四章は師範の呼吸記録帳の為)