第6章 暫しの微笑み
今回も、ルー様の表情は変わられました。笑顔・・・ではなく、グラタンが思ったより熱くて、熱いという顔でしたが。でも、気に入ってくれた様で完食してくれました。
そして、続けてシフォンケーキです。生クリームと果物をトッピングしたカラフルなケーキです。
「うん、あっさりしてこれも美味しいな。」
うっ、ルー様の笑顔が眩しいっ!!ルー様こそ神なのでは?
「ルーチェス、貴方・・・。」
部屋になだれ込んで来たのは、王妃様はじめ国王様両人。決定的瞬間を見逃さずに済んで、感無量な様です。
お二人共揃って、目に涙が浮かんでいました。ルー様は、少し恥ずかしそうです。心なしか、前回より笑顔の時間が長かった気がします。
それでも、やはり無表情に戻ってしまわれましたが。
そして、この日も献立表が料理長に手渡されていました。オリバー様によって。
それからも、ちょくちょくと作る様になり、ルー様の呪いは少しずつだけど解けかけている様に見えました。
それに比例して、料理人さんに献立表が溜まっていき、ルー様は更に私に甘くなりました。
城中の話題が明るいものになっている中、あの盗賊団の出没が報告され空気感が殺伐としたものになってしまったのは直ぐのことだった。
ただ、どういう訳か王都の中に入ることは出来なかったらしく、城外で戦闘が行われる様になった。盗賊団が城内に忍び込もうとすると、決まって不慮の事故に合うらしい。
突風が吹いて隠れていた馬車の荷物が吹っ飛んで姿が見つかったり、局所の大雨で地盤が緩んで落石事故に遭遇したり、通常はいない魔物が現れたり・・・。
そのすべてが、女神の怒りなのだと民の中で広がっていた。勿論、貴族の中でも同様らしい。
女神の代理人をたばかると、それ相応の罰が下されるのだと・・・。
って、私は何もしていないし大層な力もない。でも、話がどんどん大きくなっている。崇め奉られる一般市民ってどう?
そんな風な状況になっても、私は私だ。傲慢な態度も偉そうな振る舞いもしなかった。お世話になっているメイドさんたちには、いつもお礼言うもの。
だから、余計に崇められる事に私だけ気付いていないのだけど。