第5章 プライド
あ、オリバー様は視線を反らしました。
「それに、王太子相手に否定する言葉を言ったのでしょう?そんな軽率で浅慮な人を、誰が王族に迎い入れたいと思います?少なくとも、ルー様に相応しくないと思いますが。」
言い過ぎた・・・そう思った時には、女の子の扇子を持った手が振り上げられていた。
(殴られる!!)
そう思った矢先、私と女の子の間に突風が立ち、扇子は飛ばされて行った。私も女の子も、オリバー様でさえ唖然である。
「・・・どうやら、女神の代理人であらせられるカオリ様に良からぬことをしようとしたことで、女神様の顰蹙をかったのでは?」
真っ先に立ち直ったオリバー様がそう言った。女の子は顔色を真っ青にしては、その場から逃げて行った。私は悪くないと叫びながら。
「あの・・・本当のところ、どうなのですか?」
「良いではありませんか。そういうことで。」
「まぁ、怪我もなかったことですし、そうしましょうか。」
その後、本当の意味で顰蹙をかったのか不明だが、公爵家が統治する領地の作物が不作になったことで、更なる尾ひれがついたらしい。
噂は怖い。
更に数日後の夜。
ベッドで寝転ぶ私に、ルー様がその後の事を話してくれた。
「結論から言って、留学先のある貴族に輿入れが決まった。一日も早く、厄介払いをしたかったのだろうな。」
「本人は?」
「本人が拒否したとしても、どうにもならない。私としても、女神様からの罰がなければ・・・。」
本当に罰なのかな?異世界は不思議なことがいっぱいだ。
「それにしても、恋が冷める表情とはどんなものだったのだろうな。」
「気になるのですか?」
「私が気になるのは、カオリだけだ。どんな表情をしても、愛らしいと思う。」
ルー様、それは恋は盲目と言うのですよ?
「それにしても、面倒事が解決されて良かった。そうだ、明日、案内したいところがあるから付き合ってくれ。それに、デートもしよう。」
「楽しみにしていますね。」
本当に、女神が私たちに力を貸してくれたのかも?