第4章 隣の芝生は青く見える
今日はガゼボで読書中の私。ルー様から数冊の書物を借りて読み耽っていた。ルー様は執務中だ。私には見せられないものもあるのだろう。昼食は約束しているので、お昼には迎えに来てくれることになっている。
この世界の文字は、補正?からか読めたし、文字はアルファベットに似ていたので何とかなった。神様?女神様?ありがとうである。
そうそう、王妃様からお茶会に誘われた。期日は明後日だ。恋人のお母さんと言ってしまえばそれまでなのだけど、相手は一国の王妃だ。緊張感で少々、心が痛い。
そして、そこでフト思い出す。元の世界の家族のこと、友達のこと。私の存在ってどうなっているのだろう?事故死?そうなの?
それに赤女の存在が、今は怖くて仕方ない。本気でこの異世界にもいそうだと密かに思っている。だって、笑ってたんだよ?
・・・ん?何か、声が聞こえて来る。何だろう?
声がする方へと近づき、そっと覗き込んだ。そこにいたのは金髪に琥珀色のガタイのいいルー様よりは劣るけれど、まぁまぁのイケメンとそれ重くない?と思ってしまうドレスを着た女の子がいた。
言い寄る男性に、満更でもない女の子。全然知らない人の逢瀬を見てしまい、サッと身を隠す。他人の恋路を邪魔しちゃダメだ。
が、男性から発せられた言葉で足が止まった。
「女神の代理人がいるのだろう?あのイケ好かないルーチェスが大事にしている女のことだ。あの女を連れて来てくれ。あの女を俺のものにすれば、あのルーチェスの泣きっ面を拝めるかもしれないからな。」
随分な言われようだし、あの女扱いにムッとする。しかし、臍を曲げたのは対話している女の子も同じだったらしい。でも・・・泣きっ面は無理だよね?きっと、無表情だろうから。だからと言って、態度と言葉は別だろうけれど。
おおぅっ、何か女の子が吠え出した。会ったことはない筈なんだけど、私のことを女の子もあの女呼ばわりしている。ルー様のファンなのか?
茂みに座り込んで隠れたままの私を、いきなり口を塞ぐ誰か。恐る恐る視線を向けると、ルー様が人差し指を立て喋らない様にと合図する。それに頷き、そっとその場から離れた。
「何をしてた?」
少々、ご立腹?私がガゼボにいなかったから、探させてしまったものね。だから、一部始終を話しておいた。