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私の異世界転生生活

第3章 ルーチェスの日記①


私が16になった日の事。隣国の王女が私に呪いを掛けた。無表情という、命には関わらない呪いだった。何故、それが分かったのか?

一向に王女に私が心を寄せないが故の結果で、本人が自らカミングアウトしたからだ。解呪の方法は分からないと言う。行きずりの魔女によって受けてしまった呪いは、この時はまだ楽観視していた。

王女は慌てて国に帰って行った。逃げ出したのだろう。そして、隣国の国王から正式に謝罪が来たのは、思ったより早いものだった。

慰謝料として受け取ったのは、ある一角の土地。想像以上の広大な農地だ。我が父である国王も、その謝罪を受け取ることとして、この出来事が不問となった。

そして、隣国でも解呪の方法を調べることを約束してくれた。元々、私の表情はそう変化がある方ではなかったので、自身もそう気にしていなかったのは大きい。


そんな中、同じ年である公爵家の令嬢が、表情がない私でも構わないと言い頻繁に関わって来る様になった。呪いのことは貴族間でも知られていて、私に近付く者は減って行く最中のことだった。

王立学院で在学中だったので、よく行動を共にした。彼女は感情をあまり隠さない令嬢だった。そんな他と違うところを不満に思うことはなく、私に只管好意を寄せてくれる眼差しを眩しく思っていた。


しかし、元々堪え性がなかったのだろう。月日が過ぎる度に、私に無理難題を突き付けて来るようになった。

「笑えと。」

私自身も、努力はした。だが、表情筋がピクリとも動かないのだ。そんな私に業を煮やしたのだろう。

ある日、我慢の限界が来たのだと泣き叫ばれたのだ。少なくとも、あの令嬢のことを憎からずは思っていた。だが、令嬢の口から聞かされたのは、私の心を引き裂くには十分だった。

「不完全な王子なんて、人じゃない!!」

私の何をもってして不完全だと言ったのだろう。私は王子として、王族の一人として研鑽は怠らなかった。たった無表情という呪いが原因で、私の全てを否定した。

この時はまだ、私と関わろうとする令嬢がいなかった訳ではない。だが、この先関われば、またこんな出来事が起こるかもしれない。

両方にとって、辛い結果にしかならないだろう。そう思ってから、私は女性を突き放すことにした。

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