第2章 敏腕小姑従者登場
執務室の中に人がいた。銀髪碧眼のルー様と同じくらい長身のこれまたイケメンである。
「ルー様、謁見は終わられた様ですね。おや、そちらが彼の?」
「あぁ、カオリ=アオイだ。」
私は背筋を伸ばし、ルー様の従者に挨拶した。
「初めまして。私はルー様の従者をしております、オリバー=ルミドクです。お見知りおきを。」
仕事出来そうな人だなぁ。最初の印象。
「私の仕事を手伝って貰うことになった。」
「左様でございますか。では、書類整理をお願いします。」
うん、書類整理くらいなら何とか。片付けとか嫌いじゃないし。テキパキと書棚に片付けていると、何やら私の背に視線を感じる。
振り返れば、妙な笑みを口元に浮かべるオリバー様。何か気に入らない事でもあるのだろうか?
「その調子でお願い致します。」
どうやら、使えないレッテルは貼られなかった様だ。
「では、私はこれらの書類を各部署に届けて参ります。」
「頼む。」
「行ってらしゃいませ。」
オリバー様を送り出せば、ルー様が私に手招きをした。
「何かご用ですか?」
「傍に来てくれ。」
机を周り、傍に立つ。すると、ルー様は自身の膝を叩いた。
「えっ?あっ!?」
気付けばルー様の膝の上に座らされていた。額から始まり、瞼、頬、唇にキスが降って来る。
「ルー様、今はお仕事中でしょう?」
「愛おしいカオリが傍にいれば、抱き締め口付けたくなるのは仕方ないだろう?」
「私の存在が足枷になるのは嫌です。」
あ、無表情だけどショボンとしている。何、この可愛い人は。王子でもションボリするのね。
「たくさん頑張れば、後でご褒美があるかもしれませんよ?」
「褒美?ならば、この愛らしい唇で口付けて貰いたい。」
「たくさん頑張れば、あるやもしれませんね。」
「分かった。」
顔は無表情だけど、素直だ。そんなルー様を微笑ましく思いながら、私は作業に戻った。書類に目を通すルー様は、後光が射して神の様だった。
一時間ほどで、オリバー様が戻って来た。手にはそれなりに分厚い書類を持っている。
「ただいま、戻りました。おや、捗っておいでですね。」
嬉しそうに微笑み、追加の書類を置くオリバー様。
「こちらの書類は目を通して頂ければ、後は私が処理致します。」
「分かった。」
再び静かになった執務室。でも、不意にオリバー様がこう言った。