【R18夢小説】手に入れたモノを護る為に【HQ/影山飛雄】
第7章 第三話 関係
腕の中でうたた寝している伊織の事をじっと眺めて過ごしている。
一回だけの交わりだったが、心が疲れているのでそれだけで終わりにした。
本当に伊織が妊娠した事に対する満足感と、伊織が俺を想っていたと言う事実で胸が満たされている。
(妊娠……夢じゃないんだよな…………)
妊娠検査薬をこの手で使って確認したのだけれど、それでもまだ現実味がなくて実感が湧かない。
伊織は自分の身体の変化を受けて実感があるのだろうけれど、俺にはそれがないので他人事の様にも感じてしまう。
伊織の腹の中に居るのは俺の子供なのだから、他人事なんて表現は最低野郎の考えである。
男は産まれるまで父親の自覚が出ない事がある、と言うが俺はそうはなりたくなかった。
俺は伊織の腹の中の子供の父親だ。俺は父親になるんだ。
(なんか……恥ずかしくなってきたぞ……)
むず痒い気持ちが出てきたので、誤魔化す様にと伊織を抱きしめた。
何処を触っても伊織は柔らかくて心地良い。この柔らかさにこれからは腹の膨らみが加わるのだと思うと、楽しみで仕方ない。
(……結婚早くしてぇな)
俺の誕生日を考えると早くても結婚は二年後の年末になる。婚姻届をどうやって貰おうか考える。
準備する期間はたっぷりあるけれど、婚姻届だけはすぐにでも用意して書きたかった。
見える形で伊織との明確な関係が欲しかった。子供が出来た今でも俺達の関係に名前はないままだったから。
(…………今更彼氏彼女は……おかしいよな)
そもそもそんな関係を名乗る権利が俺にあるのだろうか。身勝手な事ばかりしてきた俺に。
「……伊織がなりたいって言うならすぐにでもなるけど」
柔らかな髪を弄っていると浅い眠りから醒めたらしく、ボーッとした顔で伊織は俺を見てきた。
その姿を見ながら無意識に腹を撫でていると、覚醒しきったらしい伊織が耳まで真っ赤にして、俺から逃げる様に布団に包まってしまった。
「伊織……?どうした?」
布団に包まる伊織に触れるとビクッと反応された。伊織の返答を黙って待っていると、もそっと布団から顔を出して伊織は言った。
「………恥ずかしい」
「何が?」
「……全部」
そう告げ、伊織は再び布団の中に隠れてしまった。
伊織の言う『全部』が何を指しているのかじっくりと考える。