第4章 黄色い瞳は何を見る(前編)
「うわぁぁぁぁぁぁん。痛いよ、お母さん……」
それは1人の子供の声。その声で私達は辺りを見渡す。それは私達が来た時の街……賑やかだった街とは思えないほど酷く恐ろしい街に変わっていた。
『 もう大丈夫だよ、大丈夫だから……』
私は子供に近付いて慰める。
「皆さん、怪我人を僕の所に集めて下さい」
「分かった!」
八戒の言葉に悟空と悟浄が頷き怪我人を探す。
「あーあ、ホンマ酷いもんやね妖怪のしはる事は」
「………。」
ネックレスで何かした男が呟き、三蔵はそんな男を見つめる。
悟空はそんな三蔵に「手伝って」と声を掛けた時
「お父さん! 目を開けて、お父さん!!」
涙を流しながら父親を抱く女性がいた。それは私達が泊まっていた宿の店員さん。抱いているのは宿屋の主人。
動く気配のない主人に三蔵は
「……手遅れだ」
そう言った。涙が止まらず叫ぶ女性を眺める事しか出来ない悟空と三蔵。何とも言えない状況の中、ネックレスの男が女性へと近付いていった。
「もう泣かんでええよ」
そう言ってネックレスを触ると光る球体らしき物が現れる。そして、その光を動かなくなった宿屋の主人の額に当てると光は主人の体へと入っていった。
眩しい光が辺りを照らし、雲で覆われていた空も晴れていく。
「………っ……」
「……お父さん!」
動く事がないはずの宿屋の主人が息を吹き返した。
「嘘だろ……」
『生き……返った?』
悟空と私はそう言い、三蔵は無言でその光景を見つめる。ネックレスの後は八戒に近づき
「そこの眼鏡のあんたはん、治癒が出来はるんやったらお任せしますえ」
「え、えぇ……あのっ」
「のうなった方はぜーんぶ、ウチにお任せや」
そうして、この街での怪我人や亡くなった方の治療は終わった。街では「司教様」と呼ばれ多くの人に感謝されていた。