第15章 問題13 江戸城パニックぱすにっく
きっぱりと断った総悟から近藤に視線を変え、松平は言った。
「まあ取りあえず今回は見逃してやるが次はねェと思えよな」
「恩に着るぜとっつァん」
「それと妹の面倒はちゃんと見ろよな」
「分かってるって」
へらへらと答えた近藤の事を優姫はじーっと眺めるのだった。
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侵入者でなくなった事からゆっくりと将軍とそよと楽しそうに優姫は話をしているのだった。騒ぎが一段落し、十四郎も総悟も一息ついている中、松平は近藤の元に来て周りに気付かれない様に言う。
「近藤。アレが『例』の子なんだろう?」
優姫の事を見て言った松平に近藤は頷いた。
「ああ」
「見た感じは普通の女の子でしかねェな」
「俺はいつも一緒にいるんだ。優姫ちゃんは本当に何処にでもいる普通の子だよ」
にこにこと楽しそうに笑っている優姫の事をじーっと見て、松平は真顔になって言い切る。
「あの子が攘夷浪士との関わりが疑念されてる」
「…………ああ」
先日優姫が攘夷浪士である高杉晋助と一緒にいたと言う情報が近藤のみに伝えられていた。証拠写真もなく、真意は分からない。
それに何よりも優姫が攘夷浪士であると言う事を信じたくなかったのだ。
「優姫ちゃんは優姫ちゃん。それ以上でもそれ以下でもねーよ。俺は優姫ちゃんの事を信じたい」
腕を組んでそう言うと近藤も優姫の元へ向かっていき、松平は溜息をついてからぼそっと呟いた。
「……危ねェのは攘夷浪士である事じゃねェんだよ、近藤」
にこにこと楽しそうに微笑んでいる優姫の事を見、松平は困った様に言った。
「幕府が優姫ちゃんの事、目ェ付けてるんだよ……」
何も知らず、優姫は今も笑顔でいるのだった。
(2007,1,6 飛原櫻)