第15章 問題13 江戸城パニックぱすにっく
そう近藤が言うのとほぼ同時に一人の男性が入ってきて言った。
「その嬢ちゃんが侵入者なんだな。一応捕らえろオメー等」
その一言に近藤は蒼い顔をしながら慌てて言う。
「いやちょっととっつァん待ってくれよ !! 」
「誰であろうが江戸城に侵入した奴に変わりねェだろうが。大人しくその嬢ちゃんを……」
男性が其処まで言った所、優姫の事を庇う様に将軍が立っていたのだった。
「将ちゃん何してんだ?」
「片栗虎、彼女は余とそよの友人だ。侵入者では無い」
「…………」
「松平さん。どうか優姫さんを見逃しては頂けませんか?」
後に続く様にそよがそう言ってきた為、松平は頭をガリガリと掻いてから十四郎の後ろで怯え隠れていた優姫の頭を乱暴に撫でて言う。
「話に聞いていた以上の存在の様だな」
「?」
言っている意味が分からないらしく優姫がじーっと見ていた。その姿を横目に松平は慣れた手つきで言うのだった。
「おい侵入者は気の所為だったと伝えておきやがれ」
「とっつァん……」
松平の行動に近藤が安堵していると苦笑いで言う。
「将ちゃんにもそよちゃんにも言われたらさすがに捕らえる訳にはいかねェだろう」
「片栗虎、助かる」
そう言った将軍に松平は手を振りながら言い返した。
「なになに、俺と将ちゃんの仲だろうが」
「優姫さん」
まだ怯えているらしく十四郎から離れずにいる優姫の元にやってきたそよは言った。
「彼が先程話していた松平片栗虎さんです」
「この人が?」
「ええ」
にこっと微笑んだそよに安心したらしく、優姫は視線を松平の方に移した。
松平はオールバックに無精髭、サングラスをしている中年の男性だった。
「嬢ちゃんが近藤達がよく話す『優姫』ちゃんだな」
「うん」
安心はしたのだが警戒心は解けていないらしく、優姫が十四郎から離れる様子は全く見られないのだった。
そんな様子を見て松平は頭をぼりぼり掻きながら困った表情で言う。
「オジサン嫌われちゃったみたいだなァ」
「そりゃあいきなり逮捕する、みたいな事言われればさすがの優姫だって怯えるに決まってますさァ」
すたすたっと優姫の元に来ながら言った総悟に松平は言う。
「んな事言ってもなァ俺には俺の立場があるだろうが。お前等全員切腹させるぞ」
「遠慮しますさァ」