第15章 問題13 江戸城パニックぱすにっく
「将軍様初めまして。えっとね、遊びに来ました――」
にぱっと微笑むと将軍は気の抜けた表情で言った。
「これはまた小さな侵入者だな。片栗粉達に説明してきた方が良いのか?」
「そんな事をしたら優姫さんが捕まってしまいます。このまま優姫さんの事を隠したまま移動しましょう」
そう言ったそよに将軍は静かに頷き、こそこそと移動するのだった。
「将軍様の自己紹介ながーい!」
将軍の自己紹介を聞き、優姫は尊敬の眼差しで言っていた。
「そんなに長いの覚えるの大変じゃないの――?」
「そんな事はない」
そう言うと将軍は一息で言う。
「征夷大将軍徳川茂茂」
「凄い凄い――!」
パチパチと手を叩いて言うのだから将軍も嬉しくて仕方ないらしく、何度も何度も言っていた。そんな二人のやりとりを見てそよは嬉しそうに微笑むのだった。
楽しい。
それは今の状況の事を言うのだろう。そう思ったからだ。
こんなに楽しいと思う状況が久しぶりで、それで初めての様な感覚もあるから。少しでも長くこの空気が続いて欲しい、そう願うのだった。
「優姫は片栗虎に会った事がないのか」
将軍に尋ねられ、優姫は人差し指を顎もとに当てながら答えた。
「ん――えっと片栗粉さんは近藤にーちゃん達よりも偉い人で、近藤にーちゃん達の上司の人だよね?うん、名前だけ聞いた事あるよ」
「片栗虎は良い奴だ、今度優姫も会ってみると良い」
優しく頭を撫でられ、優姫は嬉しそうな表情でいる。
そんな優姫の表情に釣られてそよも将軍も微笑んでいるとバン!と大きな音と共に襖が開いた。
「「「 あ 」」」
其処には怒りのオーラがあふれ出ている十四郎の姿があった。
「お~ま~え~は~ァ~」
「わ――見つかっちゃった!怒られちゃう !! 」
わたわたと慌て逃げると怒りを爆発させた十四郎が怒鳴り追うのだった。
「この馬鹿娘がァァァァ !! テメェ何処に来てるだァァァ !! 」
「土方にーちゃんが虐めるゥゥゥゥ !! 」
「怒るに決まってるだろうがァ !! 」
ばたばたとそよと将軍の周りをグルグルと走り逃げていると、その後から近藤と総悟がやってきた。
「俺達のお姫様やっと見つかりましたねィ」
「優姫ちゃん駄目だよこんな所に来たら !! 」