第15章 問題13 江戸城パニックぱすにっく
「大丈夫ですか?」
「う――?」
くるっと振り返ると高そうな着物と簪を挿している少女が一人座っているのだった。にこっと微笑んでいる少女に優姫はにぱっと答えた。
「うん、有り難う」
にこにことしていると腕の中にいたシンがぴょんと腕の中から飛び出し、少女の周りをぐるぐると走り回る。
「まあとても可愛らしい子ですね」
優しくシンの頭を撫でながら少女は優姫に笑顔で尋ねてきた。
「侵入者さんが出たと聞いていましたがどうして侵入をしたのですか?」
すると当たり前の様に優姫は笑顔で答えたのだった。
「あのね、私そよ姫様に会いに来たのー」
すると少女は驚いた顔をしながらにこっと微笑んで自己紹介をしてきた。
「まあそうでしたの?私がそよです」
そう言われ優姫は笑顔で尋ねるのだった。
「おねーちゃんがそよ姫様――?」
「はい」
にこっと返事をしたそよに優姫も嬉しそうに微笑んだ。
◆
「どうして私に会いに来たのですか?」
そよ姫に尋ねられ、優姫はシンを膝の上に乗せつつ答えるのだった。
「えっとね、今日近藤にーちゃんに聞いたのだけど将軍様には妹姫様がいるって聞いたの」
「はい、私の兄は将軍です」
「でねでね、将軍様もそよ姫様もずっとお城にいて外に行けないって聞いたの」
そう優姫が言うとそよは寂しそうな表情で頷いて言う。
「はい、私も兄も城下へ行ける事はほとんどありません」
「だからね」
「だから?」
不思議そうに優姫の事を見てくるそよににこっと微笑んで言ったのだった。
「だから遊びに来たの」
◆
「優姫さんはここで待っていて下さい。今兄の周りを見てきます」
「うん」
こそこそと将軍がいる所まで移動した二人は、周りに気付かれない様にこそこそと会話をしていた。
「侵入者騒ぎできっと兄の周りにはたくさんの人がいると思います。私が何とか兄を連れ出してみます」
「そよ姫様頑張れ――」
優姫に応援され、そよはにこっと微笑んで将軍の所へ向かって行った。
「シン、今将軍様が来るんだってー」
ぐしゃぐしゃっと頭を撫でてやるとシンは不思議そうにキューと鳴く。暫くするとそよ姫と共に一人の男性がやってきた。
「兄様、彼女が優姫さんです」
やんわりとそよが紹介すると優姫は笑顔でぺこっとお辞儀をして言う。